クリーンルームの異物と規格について — ① —
ここでは、クリーンルームの異物、代表的な規格、クリーンルームの定義、JIS規格、ISO規格、表面洗浄度、VDA規格について、記事を紹介します。(引用元:クリーンルーム総合サイト CSC-BIZ.com様より)
クリーンルームの異物と規格について
クリーンルームのクラスとは?
クリーンルームクラス100、クラス1000、クラス10000、ISOクラス5、ISOクラス6、ISOクラス7 などの言葉を聞いたことがありますか?
それは、クリーンルームの規格に基いて清浄度を示すクリーンルームの階級の呼び方です。
規格によっては呼び方が異なります。クラス100、クラス1000、クラス10000、は FED-STD-209D のクラスで、ISOクラス5、ISOクラス6、ISOクラス7は ISO規格 のクラスです。他にも JIS規格 や VDA規格 などもあります。どれもがクリーンルーム内の異物の数を管理する規格です。
当ページは、クリーンルームの異物及び代表的な規格をご紹介します。
1)クリーンルームの異物
微小異物
生産工程中にある生産に障害があるものを「異物」と言い、その極小サイズのものを「微小異物」と言います。
何も異物の対象となるのはクリーンルーム規格で決められているサブミクロン粒子とは限りません。
人間の目視限界はだいたい50μm程度なので、それ前後の大きさの異物はクリーンルームで言う「微小異物」となります。
目視では見えない微小異物対策を行うには、まずは対象異物の挙動について詳しく知っておく必要があります。
実際のクリーンルームと異物問題
実際にお客様のクリーンルームに行ってクリーンルーム診断を行うとお困りの異物の大きさや組成が決まっている工程が多いことに気づきます。
食品・製薬であれば、多くは「金属片・塩ビなどの装置由来の異物、そして虫、毛髪」です。
エレクトロニクス関係では圧倒的に「繊維くず、金属片」が多くなります。塗装や表面処理では「繊維くず、金属片に加えて塗装カス、コンベアカス」などの工程独特の異物が多くなる傾向があります。
そしてそのサイズはクリーンルーム規格で決められたものよりもずっと大きいことが多いようです。
微小サイズからだいたい光学関係で数μm以上、塗装や表面処理では20μm以上、電池では200μm以上の金属(銅、アルミなど)、などの大きさの異物が嫌われる傾向にあります。
繊維くずと金属片は目視できるほどの大きさの割にその挙動は全く違い、しかも従来のクリーンルーム機器では完全に除去できない点にあります。
繊維くず
繊維くずは「軽量」で飛びやすく、静電気を帯びやすい、清掃のたびに宙に浮いてなかなか除去できない。
生産材にも多く含まれていて根絶できないなどの問題があります。
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金属片
金属片は時間的には長いスパンでゆっくり徐々に増える、「重い」ので場所依存性は高い。しかし頻度が低いので長い時間のうちに広く飛散してしまう。製品に付着するとその硬さから製品を傷つけたり、導通に影響するなど性能そのものに影響することもあります。どちらも0.3μm粒子の回収用途で開発されたクリーン化機器では100%回収は不可能です。
将来自動化が進みあらゆる工程がAIやロボットによる製造に変化していくでしょう。ロボットは人間と比較すると発塵そのものは比べ物にならないほど少ないし、持ち込み異物も軽減されると思います。しかし、発塵そのものを100%ゼロにすることが出来ない以上、クリーンルームの維持管理の問題は相変わらず私達の周りに付きまとうことになるでしょう。
業界と異物
一般的なクリーンルームの定義であるISO、JIS規格の中ではクリーンルーム異物は物性や比重ではなく気中に浮遊する粒子の粒径と個数でのみ表記されています。
しかし、業種業界によっては大きさ的にはほとんどの場合それ以上のサイズとなりますが、以下のように多数の異物が嫌われています。
業種業界によって違います。
・食品工場では安全のため金属やガラスの異物、不快な虫、毛髪類
・塗装などでは外観意匠のために目視限界程度の大きさの異物
・膜内では外観の1/10サイズの異物も対象。塗装のハジキとなる物質
・電子部品では導通を妨げる繊維くず、あるいは過度の導通がある金属片
・電池工場などでは銅、アルミなどの特定の金属片
・フィルム業界ではスリットカス、シリンダーからの異物、静電気吸着
・搬送系ではコンベアカス、塗装粉、作業員からの汚れ
・医療機器では繊維くず、皮膚片
・光学関係では人の皮膚片、加水分解するような物質、静電気による異物の付着
上記以外にも、業種業界ごとに多数の異物があり、それぞれに特化した対策が叫ばれています。
また、規格・定義の点でもそれぞれの別々の規格を立てるなど多角化の傾向がみられます。
要はすべての業種業界で標準化されればよいのでしょうが、対象となる異物は明らかに違うのに、現在は良くまとまった従来からのクリーンルーム規格で代用されているという現状なのです。
2)代表的なクリーンルーム規格
クリーンルームに関する規格は世の中にいくつか存在しています。
方式ごとに基準となる体積・粒子径・清浄度クラス表示が異なるため、どの規格による表示なのかを注意する必要があります。
代表的なものは、JIS規格、FED規格、ISO規格です。
これらの規格の共通点は0.1μm以上または0.5μm以上の気中微粒子を基準としているところです。
気中微粒子を気にする業界は、半導体製造業界などがあります。
それに加えて、「表面清浄度の規格」や「VDA規格」があります。
表面清浄度の規格は、気中ではなく、気中から落下してきたホコリの数を見ます。
30μm以上の粗大粒子が問題となる工程では、知っておくとよい規格です。
一方、VDA規格は、自動車製造にまつわる業界向けの規格です。
当規格も粗大粒子を注目するもので、自動車以外の業界でも応用できます。
当ページでは、まず、世の中に既に普及しているJIS規格やISO規格を紹介した後、「表面清浄度の規格」と「VDA規格」を順番に紹介していきます。
JIS方式
JIS B 9920の清浄度クラスの表示で1m3中の0.1μm以上の粒子数を10のべき乗で表したときの指数で表します。
ISO基準が制定されたのを受け、2002年に改定されています。
クリーンルームに関するJIS規格の項目はこちらです。
表示:クラス1~9
※クラス5~8はFED-STD-209Dのクラス100、1,000、10,000、100,000にそれぞれ相当します。
FED-STD-209D(米国連邦規格 1998年)
単位は英国単位(FS単位)。
0.5μm以上粒子を基準とし、立法フィート中の粒子数を表示します。実際にはいまだに一番良く使われていると思います。
表示:クラス1、10、100、1000、10000、100000
FED-STD-209E(米国連邦規格 1992年)
単位はメートル法(IS単位)を優先し、英国単位(FS単位)を併記します。
清浄度クラスは0.5μm以上粒子を基準とし、粒子数を10X乗個/m3で表し、X値をクラスとします。
メートル法使用を明確とするためMを付加しクラスM(X)とします。
表示:クラスM1~M7
ISO方式
日米欧を中心に初の世界統一規格として作成が進められています。
ISOクラス表示では、基準粒子径は0.1μm、基準体積は1m3で、JIS方式が取り入れられています。
ISO規格の詳細は次項を参照ください。
3)クリーンルームの定義
JIS規格では、クリーンルームの定義は1994年に制定され、2000年に改訂された JIS Z 8122(コンタミネーションコントロール用語)に下記のように規定されています。
コンタミネーションコントロール(清浄度管理)
限られた空間、製品などの内部、表面または周辺について、要求される清浄度を保持するために必要とするあらゆる事柄について、計画を立て、組織し、実施すること。
クリーンルーム
コンタミネーションコントロールが行われている限られた空間であって、空気中における浮遊微粒子、浮遊微生物が限定された清浄度レベル以下に管理され、また、その空間に供給される材料、薬品、水などについても要求される清浄度が保持され、必要に応じて温度、湿度、圧力などの環境条件についても管理が行われている空間。
JIS Z 8122 コンタミネーション用語集にはインダストリアルクリーンルームとバイオロジカルクリーンルームについても定義されています。
インダストリアルクリーンルーム
工業品の製造工程で用いるクリーンルームであって、主に空気中における浮遊微小粒子が管理された空間
バイオロジカルクリーンルーム
主としてバイオテクノロジーの分野で用いられるクリーンルームで、主に空気中における浮遊微生物が管理された空間。
備考:層流式治療室、層流式手術室なども含まれる。
ISO14644-1によるクリーンルームの定義
ISO規格では、「14644-1 2.1.1 定義」にクリーンルームとして規定されています。ISO規格にはクリーンルームのほかにクリーンゾーンについての規定があることがJIS規格との大きな違いです。
~クリーンルーム~
浮遊粒子濃度が制御されており,室内における微小粒子の流入,生成及び停滞を最小限にするように建設され,使用されまた例えば,温度,湿度及び圧力など,他の関連パラメータが必要に応じて制御されている部屋 。
~クリーンゾーン~
浮遊粒子濃度が制御されており,区域内における微小粒子の流入,生成及び停滞を最小限にするように建設され使用されまた例えば,温度,湿度及び圧力など,他の関連パラメータが必要に応じて制御されている専用の空間。
備考:クリーンゾーンは開放されていても閉鎖されていてもよく,またクリーンルーム内にあっても外にあってもよい。